『シャトゥーン―ヒグマの森』という本

投稿者: | 2017年4月7日

動物もののパニックホラー。人食い熊の恐怖を描く作品です。

全体的にレベルがとても高い作品です。評価が高いのも当然かと思いました。

その一方で二つほど気になった点が。

一つはジョーズなど古典名作でも頻繁に行われている、動物スペックの大幅な水増し。「ライオンや虎に百パーセント勝てる」「速力は時速八十キロ」「平均で体重四百五十キロ」「人間より頭が良い」などなど。

エゾヒグマは日本で最強の猛獣であることは間違いないですし、かなり高度な知能戦をやることも事実です。作中でも触れられているように、小型の天災に匹敵する大量殺人のきっかけになることもあります。しかしいくら何でも上記のスペックはやり過ぎです。(まあ、スペックの水増しが迫力を作るのは事実です)

もう一つは、本州以南にいるツキノワグマの大幅なスペックダウンが気になりました。作中で最大60キロとされているツキノワグマ。もちろん住んでいる地方にもよるのですが、ツキノワグマは最大で180~200キロ程度にまで成長します。(それでもヒグマに比べればずっと小さいですし、そこまで行く奴は滅多にいませんが)ちなみに日本猪も160キロオーバーにまで成長します。

 気になった点はありましたが、内容はステキ。シナリオはパニックホラーの基本を押さえていて、為す術無く喰われる人々に混じり、最強の女戦士が活躍します。ママである薫さんは、作中で「ベンチプレス換算五トン」という熊パンチを何発もくらいながら、果敢に熊と戦います。もちろん彼女も凄いのですが、彼女の娘の9歳児も凄い。熊パンチを何発も受けている上、10メートルくらい吹っ飛んだり、熊に噛まれて持って行かれそうになったりしながら、最後まで「軽傷」で生き残りました。

最後は若干あっさりでしたが、続編を意識した展開になっていて、なかなかの内容。このミステリが凄いのトップに選ばれたそうですが、ともかく面白さでは充分にその座を満たしているかと思います。